不動産適正取引推進機構より、令和2年度の宅地建物取引士試験について発表がありました。詳しくは、こちらをご覧ください。
宅建講師として、長い間この試験とは関わってきましたので、下記文言が記載されたことについて、私なりの思いを書いておきたいと思います。
「早期の宅地建物取引士の資格取得を迫られていない方につきましては、なるべく今年度の受験申込みを自粛していただきますよう、ご協力をお願いします」
毎年、20万人近い受験生が同時に受験するため、会場の準備等が大変だろうとは思っていましたが、主催者側からの自粛依頼は正直驚きました。宅地建物取引士試験は、年に1度しかない国家試験です。もし、司法試験や公認会計士、税理士試験等で同じような受験自粛依頼がされたとしたら、受験生はどう感じるだろうか?ということも、ふと考えていました。
「早期の宅地建物取引士の資格取得を迫られていない方」とは、どのような方を想定しているのか、新型コロナの影響で本気で自粛依頼するのであれば、ここを明確にしないとダメではないでしょうか。
少なくとも、私が教えてきた受講生の方々には、これに当てはまる方はいませんでした。しかし、受講生の多くが不動産とは関係のない職場に勤務されている方や学生が多かったです。見方を変えれば、宅建士の資格がなくとも影響はない方が多かったです。どちらかというと、取得できればステップアップにつながるや就職に有利という理由でチャレンジされ、資格学校に通学されているケースが多かったように記憶しています。
かたや、本当にこの資格が必要な不動産仲介等の仕事に関わっている方々は、会社から強制的に受験させられているというケースが多いように思います。何度も落ちてリピーターになっている受験者層で一番多いのがこの属性の方々です。
かつて、宅建士は、宅地建物取引主任者という資格名でした。これが、士業に格上され、宅地建物取引士となりました。ただ、今回のような文言が主催者側から出されると、所詮その程度の資格と思われてしまうのではないかといらぬ心配をしています。
日本では、たくさんの国家資格があります。私が常に受講生に伝えてきたことは、数ある国家資格の中で費用対効果が一番良い資格と紹介してきました。このことは今でも変わりません。
医師の資格を取得するためにどれだけのコストがかかるのか、そして、どれだけ稼げるのか、一度調べてみると私が言っていることを理解していただけるはずです。宅建試験に合格するためにどれだけのコストがかかり、不動産の仕事でどれだけ稼げるかを比較してみてください。もちろん医師でもドクターXのような凄腕であればすごい報酬がもらえます(かけたコストに対しての見返りがかなり大きい)。これは不動産でも同じことで敏腕社長や、敏腕営業がどれくらい稼いでいるのかを見れば一目瞭然です。
宅建試験は例年、10月第3週の日曜日です。正直、準備するだけの時間はたくさんありますし、これからもまだ時間があります。司法試験は早々に延期の日程も発表し、準備されています。司法試験は、8月に延期されるので、空調と換気をどうするのか等、いろいろなことを検討しなければいけないのではないかと容易に想像できます。
今回の自粛依頼については、すこし悲しい気持ちになったのと、これを見た現役の宅地建物取引士、各々の不動産協会も宅建士資格の地位向上について具体的な動きを見せて欲しいと切に思いました。
いずれにせよ、今年絶対に合格するという気持ちで勉強されてきた方々には、今年落ちたら来年は受験しないという意気込みで受験して欲しいと思います。